再生紙

「5つの自由」を超えて

5つの自由はアニマルウェルフェアを考える上での重要な指標だとされています。
その始めは、イギリスの畜産動物協議会によって1965年に提出されたブランベルレポートにおける提言です。現在までに改定はされていますが、基本は当時のものであり、自由を獲得することを目標とする発想は少々、時代遅れと言えます。ただし、古いということは、不要ということではありません。必要ではあるが、不十分だということです。

 

自由を目指すということは、不自由な状態にあることを前提しています。奴隷が開放され自由を得ることができ、それだけで幸せになれるかと言えば、今世界中で問題になっている人種差別があったりと、十分ではありません。動物も同様であり、不自由さから開放することは必要ですが、幸福な生活を実現するためには、より健全な生活を送ることができるようにする必要があります。

実際にどこまでどのようにというのは、画一的な最善策はなく、それぞれの状況の中での判断にならざるを得ないのです。そこで重要になるのは動物の生きるというプロセスにもっと目を向け、それをいかに充実し、また動物自身が身体のみならず心も健全に居られるよう工夫を進めていくということです。特に、現時点は心の健全性への視点が不十分であると言えます。

 

5つの自由では「恐怖や苦痛からの自由」あるいは「本来の行動がとれる自由」が心の健全性に関わるものになります。動物の実験から苦痛とストレスをなくすことが絶対的に必要なのではなく、心がより健全になると少々のストレスで影響を受けない心の強さ(レジリエンス)が生まれることが知られています。また本来の行動ということも、行動パターンとして心理的要求に従い行動をとることがゴールなのではなく、そういう状態をより向上させると逆に多少の制限がある中でも前向きに生活することができる(認知的バイアス)ことも知られている。

 

人間の心理的幸福を考える新たな領域である「ポジティブ心理学」が示すように、ストレスを排除したり行動の自由を無限に求めたりするのではなく、ある程度の制約を受けながらも健全性を維持できる心の状態こそを求め、また強めていくことが重要です。

 

5つの自由はマイナスの状態をゼロレベルに上げるというネガティブ・ウェルフェアの色合いを多く含みます。これからのアニマルウェルフェアは、その先のよりプラスの状態を高めるというポジティブ・ウェルフェアの発想と工夫を強める必要があります。

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昆虫も配慮の対象の時代

当協会では、アニマルウェルフェアを語る時に、決してイヌやネコの問題に限定しません。

畜産動物、実験動物、動物園動物そして野生動物もその視野に含まれます。こうした話を聞いた人々の頭に浮かぶ動物は、基本的に哺乳類、鳥類を中心とする、せいぜい脊椎動物に留まることでしょう。アニマルウェルフェアが「生命ある存在」の在り方、人の関わり方を考えることが一つの目標と考えた場合、背骨のある動物(脊椎動物)にその目を限定することは適切だと言えるでしょうか。生命ある存在は、その言葉が指し示すように、モノではないすべてを含むはずです。

欧米での動物の権利論などの議論では、タコなど頭足類に分類される無脊椎動物が、配慮の対象の範疇に含まれます。それは、タコが体色を変化させることにより、ある種の情動を表現することができる能力(有感性:sentience)に人との連続性を見出していることによるものです。人のように感じたり、情動を表現することが配慮の対象とする基準となっています。その点では、日本での議論よりは一歩先に行っているように思えます。しかし、近年のアニマルウェルフェアの議論では、さらにその先に対象の範囲を広げようという議論が展開し始めています。

昆虫への視点の必要性が提案され、ゴキブリすらそこに含まれます。ほとんどの日本人にとっては、ゴキブリは嫌悪の対象であり、配慮の対象と考えられるものではないに違いないと思います。しかし、個人的な好き嫌いと、アニマルウェルフェアとして配慮の対象とするという議論は異なるレベルのものです。

つまり、個人としては、昆虫は嫌い、ましてやゴキブリなんてという気持ちを避難するのではなく、ゴキブリですらある種の有感性を持っており、そのことへの配慮の必要性が議論されているのです。

衛生上の問題を引き起こすゴキブリを殺すことを単純に否定することが、配慮の議論ではありません。ゴキブリであっても、使用される殺虫剤によって死に至るまでの時間に違いが生じ、その過程で感じる苦痛にも時間的にも質的にも違いがあるということが解ってきたことへの、人としての責任をどう果たすかということが問題となるのです。


こうしたアニマルウェルフェア研究の急速な展開は、改めてわたし達に動物への配慮とは何かを意識させることになります。1つは、アニマルウェルフェアはどの動物に対して考えるべきかということは、アプリオリに決まるものではないということです。生物学の進歩することにより、より多くの動物に関する知見が集積することで、その責任として知り得た事柄への配慮が必要となるのです。

私達は、ミミズはアニマルウェルフェアの対象ではないと言うのではなく、どう配慮して良いかが分からないのでペンディングにしているのだというのが適切な答えとなるでしょう。アニマルウェルフェアは現在進行系なのです。また、アニマルウェルフェアで重要なことは、単純に「殺さない」ということではないということです。人と動物の関係は一様ではない。あるいは動物そのもの状態も多様です。

「生かす」ということはその裏に「殺す」ということも含めて、わたし達は動物と関わり合う必要があるのです。生きている期間の長短ではなく、その過程の質にこそ目を向ける必要があります。

 

当協会としては、こうした世界のトレンドに乗って、ゴキブリの話まで範囲を広げてアニマルウェルフェアの議論をしようとは考えていません。アニマルウェルフェアの基本的な考え方や具体的な実践法を学び身に付けていくその先に、こうした議論はなされるべきだと考えています。それは最近、盛んに展開される「動物愛護」の動きと、ある意味、一線を画するものでもあります。自分たちの都合や興味によって生き物を選ぶことは、アニマルウェルフェアを考える上で不十分だということは意識しておくに値すると考えています。

新生児子猫を食べさせます

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