動物を考える日々

4歳の誕生日にシートン動物記10巻を買い揃えてもらった。わたしはまだ字を読むことができなかったので、母に暇を見つけては読み聞かせてもらった。聞く度に、動物の持つ豊かな心に感動し、時には自らの”矜持”を守るために命を落とすオオカミやウマの生き様に夢中になった。


これがわたしの人生における1つの大きな契機となり、動物のことを知りたい、動物のことを考えて生きていきたいと思うようになった。


10歳の時に乗馬クラブに入り、乗馬を習った。あの大きな体のウマと山道を歩いたり、高い障害物を飛び越えたり、真夏の日の照る中一緒に川で泳いだりした。ウマはわたしの一部となり、小学校に通う前にウマに会いにいき、学校から帰ればまたウマに会いにいく毎日を送った。田舎の、それも昔の乗馬クラブなので、エサは山に草刈りにいき、馬車に山程積んでくる作業を手伝ったりした。冬に外の水道が凍結してしまい、近くの家に水道を借りて何十往復もバケツで水運びをするなどということもあった。

今考えれば、面白くもあるが、大変な作業だったと思う。それは、人にとって大変だったばかりではなく、ウマもまた今ほどにはまったく設備が整っていない中での生活は、大変だったに違いない。しかし、ウマ達はわたし達子どもの言うことを素直に聞いてくれたし、刈り取った草を山から馬車で運び出す作業などでは、ウマ自身がやるべき仕事を理解し、全身の力を出して働いてくれた。そういうウマの姿の中に、わたしはシートンの物語に感じた動物の心を感じていた。



時が過ぎ大学院生となり、本格的に動物の研究に関われることになった。上級生の手伝いで、野生のキタキツネの調査で1年中牧草地の中を追い掛けたことがあった。春の子育て、夏の子別れ、冬の恋の季節、そして春の新たな命の誕生を観察した。そこには、キツネが必至に生きている姿が広がっていた。


実験の対象としてイヌを使う前に、「イヌを知れ」と指導教官に禅問答のような課題を与えられた。それも生後18日の子犬から観察しろと。イヌは昔からたくさん飼ってきたし知っていると、その指導に不満を感じるところもあった。とにかく指導通りに、ブリーダーに必死に頼み込み、指示された生後18日目という、目がようやく開いたばかりの子犬2頭を手に入れ、親代わりになり24時間一緒の生活を1年間送った。それは4時間おきの授乳や排泄の手助けをおこなうことから始まり、授業にもイヌを連れて行く、イヌに浸る日々だった。

そして1年が経ち、指導教官にイヌを理解したかと問われ、わたしは「イヌはイヌで、その全ては分からないということが分かった」と答えた。それに対し指導教官は「そうだろう。君の知っていたイヌは、君の心の中のイヌであり、今見ている、理解できないイヌがイヌなのだ」と、これまた禅問答のようなやり取りをした。


その時は、その言葉をうまく理解できなかった。しかし、今は分かる(つもりでいる)。イヌに、自分のあるいは人の気持ちを押し付けて見てはいけないのである。イヌをイヌとして、人がイヌに寄り添い理解しようと必死に試み、なおかつ見えない世界を持っているということを認めるという視座に経つことが必要なのだ。その上で、矛盾するよ

うに聞こえるかも知れないが、イヌを知ろうと努力しなければならないのである。そして知るということは、そのようにちょっと分かると、また分からないことがでてくるという繰り返しなのだ。


動物を知りたいと思った時から半世紀以上が過ぎ去った。実験したり、観察したりすることで、動物が内面に持つ世界(環世界:Umwelt※)を理解しようとしてきた。その結果、いろいろな世界を少しは見えるようになってきた。同時に、この動物の世界を潰してはいけないと強く思う。それはアニマルウェルフェアを考えることにつながることだろう。この協会では、こうした動物への眼差しを持ちながら、動物とどう関われば良いのか、何を配慮する必要があるのかを考えていきたい。



※ 環世界(Umwelt): ユクスキュルが提唱した動物の知覚・認知世界に関する概念。環境世界とも訳される。 すべての動物はそれぞれに種特有の知覚世界の中で暮らしていて、その主体として行動しているという考え。それはすなわち、種が違えば同じ物理世界にいても、作り上げている物事の意味や働きは異なるというものである。

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